福島地方裁判所会津若松支部 昭和44年(わ)94号 判決 1970年10月07日
主文
被告人水野公正を懲役三年に、被告人鈴木堅次郎、同松崎悟、同長谷川郁夫ならびに同関俊次を各懲役二年に処する。
この裁判の確定した日から、被告人水野公正に対し、五年間、被告人鈴木堅次郎、同松崎悟、同長谷川郁夫ならびに同関俊次に対し各四年間右各刑の執行を猶予する。
訴訟費用中、証人佐藤キミ子に支給した分は、被告人水野公正、同鈴木堅次郎、同松崎悟、同長谷川郁夫ならびに同関俊次の連帯負担とし、証人舟木平三に支給した分は、被告人鈴木堅次郎、同松崎悟、同長谷川郁夫ならびに同関俊次の連帯負担とし、証人加藤信一に支給した分は、被告人水野公正の負担とする。
理由
(罪となる事実)
被告人五名は、いずれも福島県大沼郡本郷町立第一中学校の同級生であるが、昭和四四年八月一七日午後六時すぎごろ、被告人水野運転の普通乗用自動車(福島五な五五五六、カローラ)に被告人長谷川、同松崎、同鈴木が、被告人関運転の普通乗用自動車(福島五な五一八二、コロナ)に同級生栗城のり子がそれぞれ分乗して同町字瀬戸町地内の新開橋付近に差しかかつた際、同級生佐藤キミ子(当二一年)を認めるや被告人水野において自動車をとめ同女に「遊びに行かないか。」と誘つたところ、同女が応ずるような態度を示し、いつたん家に帰つてくると言つたので、同女に家の前で待つように言つた。そして、被告人関において、前記栗城のり子を家に送り届けるなどしたうえ、被告人五名は、前記各自動車に分乗して同日午後六時三〇分ごろ、同町字新町一八五番地佐藤キミ子方付近路上に至り、被告人松崎において、同所に待つていた同女に対し「若松に食事に行こう。」などと誘い、この間、被告人水野において、同女を自動車に乗せどこか人目につかない所に連れ込んで強いて姦淫しようと決意し、その時前記コロナに同乗していた被告人長谷川、同関に対し「キミ子を連れて行つてやつちまうべ。」と言い、やがて、その場に来た被告人松崎に対しても右同様言つたところ、被告人松崎は、前記カローラに乗車している被告人鈴木に、被告人水野、同長谷川、同関が右のような話をしている旨伝えた。そして、被告人関運転の前記コロナに被告人水野、同長谷川ならびに佐藤キミ子が、被告人松崎運転の前記カローラに被告人鈴木がそれぞれ乗車して出発したが、当初予定の会津若松市街地にある食堂「中島会館」に寄ることなくそのまゝ走行を続け、同県河沼郡河東村地内強清水の飲食店でそば、ところ天などを食べて、前記コロナの運転を被告人水野が替り、被告人長谷川は、前記カローラに乗り替えて出発し、途中被告人長谷川が再び前記コロナに乗り移るなどし、被告人水野において佐藤キミ子に、本郷町に向う旨言つて走行を続け、同日午後八時三〇分ごろ、同県耶麻郡磐梯町大字大谷字町屋四〇九七番地所在の人家を離れた淋しい農道に至つたが、この時、被告人長谷川、同鈴木、同松崎、同関は、前記被告人水野の意を察し、暗黙のうちに意思を相通じて、こゝに被告人五名は、佐藤キミ子を強いて姦淫することを共謀し、同所において、まず、被告人水野が、前記コロナから被告人長谷川、同関を下車させたうえ、同車助手席を後方に倒して同女を押し倒し、その上に乗りかゝり、「やめて」などと言つて騒いで抵抗する同女に「騒ぐな」などと言つて、淋しい農道上で他の被告人四名がいて輪姦されると畏怖している同女の反抗を抑圧し、強いて同女を姦淫したが、その直後、同女はトイレに行くと言つて右車から出て全裸で転倒しながら逃げ付近の人家に助けを求めたゝめ、その余の被告人は姦淫の目的を遂げなかつたが、同女の右脱出の際、同女に対し、全治一〇日間を要する両大腿、膝擦過傷および打撲症、両膝皮下出血の傷害を与えた。
(証拠の標目)(省略)
(法令の適用)
被告人五名の判示強姦致傷の各所為は、刑法一八一条、一七七条前段、六〇条に該当するが、いずれも所定刑中有期懲役刑を選択し、被告人水野をその所定刑期の範囲内で懲役三年に処し、被告人鈴木、同松崎、同長谷川ならびに同関については、犯情を考慮し、同法六六条、七一条、六八条三号により酌量減軽をした刑期の範囲内で各懲役二年に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から被告人水野につき五年間、被告人鈴木、同松崎、同長谷川ならびに同関につき各四年間右各刑の執行を猶予し、刑事訴訟法一八一条一項本文により、訴訟費用のうち証人佐藤キミ子に支給した分は、被告人五名に、証人舟木平三に支給した分は、被告人水野を除く被告人四名に各連帯して(同法一八二条適用)、証人加藤信一に支給した分は、被告人水野に、各負担させることとする。
よつて、主文のとおり判決する。